オーガニックnicoの土づくり

オーガニックnicoの土づくり

なぜ土づくりなのか

土作りは
作物の健康、
それを食べるひとの健康、
周辺水域の水環境、
全てに大きく影響します

土づくり有機農業

有機農業において土づくりは「根幹の技術」です。

良い土では作物はよく育ち、病害虫の被害も少なく抑えられます。そして、土づくりが上手くできれば有機農業でも慣行農業より高品質(おいしくて栄養価が高い)で高収量の作物を栽培することができます。

有機農業の優位性

慣行農業
慣行農業における光合成産物と窒素の利用の流れ。ブドウ糖の生成、セルロースの合成、生長点での細胞形成、アミノ酸とタンパク質の合成、窒素の吸収と還元のプロセスを示している。

慣行農業では、光合成によって生成されたブドウ糖が栄養素として蓄積されると同時に、セルロースの合成に利用され、植物の外壁を形成する。この過程で、生長点では新しい細胞が作られ、植物の成長が促進される。

また、植物はブドウ糖を基にアミノ酸を合成し、タンパク質の形成に必要な材料を生産する。窒素の吸収においては、硝酸態窒素(NO₃)や亜硝酸態窒素(NO₂)を取り込み、それを還元してアンモニア(NH₄)へと変換する。

さらに、アンモニアはアミノ酸の合成に利用され、最終的にはタンパク質の形成へとつながる。これにより、植物は細胞の成長、外壁の形成、タンパク質の合成を通じて健全な発育を遂げる。

有機農業
有機農業における光合成産物と窒素の利用の流れ。ブドウ糖の生成、セルロースの合成、生長点での細胞形成、アミノ酸とタンパク質の吸収、光合成効率の向上による高品質・高収量の収穫物の獲得を示している。

有機農業では、アミノ酸肥料や土壌由来の水溶性炭水化物を利用することで、光合成による産物を余裕をもって確保できる。この結果、植物の光合成の効率が向上し、より多くのエネルギーを生産できる。

植物はこのエネルギーを用いて、栄養素の吸収や細胞の成長を促進し、より健康な生長を遂げる。さらに、アミノ酸を直接吸収することで、窒素の利用効率も向上し、タンパク質の合成がスムーズに行われる。

その結果、作物の栄養状態が良好に保たれ、対病虫害性を低下させることなく、高品質かつ高収量の収穫物を得ることが可能となる。

参考:BLOF ware

土づくりひとのからだ

デイビッド・モントゴメリーの著書「土と内臓」には、人間の腸の中では微生物と繊毛の働きで養分吸収と同時に免疫力の獲得が行われており、同じように土の中では微生物と根毛の働きで植物が養分吸収と免疫力の獲得を行っていることが分かってきた、ということが述べられています。
そして、有機物と微生物が豊富な土で得られた農産物を食べることによって人間の健康状態もよくなる、ということも書かれています

植物の根と人間の腸の仕組みは似ている?!

植物の根と土壌の間、腸の繊毛と消化した(消化しかけの)食物との間には微生物が介在して、養
分吸収を助けたり免疫力を獲得したりしている
植物の根と人間の腸の類似点

植物の根と土壌、腸の繊毛と消化された食物の間には、微生物が共生し、それぞれの健康を支えている。
植物では根圏微生物が栄養の吸収を助け、腸では腸内細菌が消化と免疫機能をサポートする。
この関係は、土壌の健康が作物の成長に影響を与えるのと同じように、腸内環境が人間の健康に重要であることを示している。

実際、良い土で育った野菜は有用な微生物や酵素を多く含み、おいしく健康に育ちます。そしてそれを食べた人の身体にも良いということが認知されてきています。農林水産省の有機食品に対するイメージの調査でも、「価格が高い」「安全である」を抑えて「健康にいい」が1 位でした。

有機食品のイメージに関する調査結果 週に1回以上有機食品を利用する20歳以上の一般消費者(n=2,820)を対象にした調査によると、 「健康にいい」と考える人が最も多く、35.7%が「そう思う」、49.9%が「まあそう思う」と回答した。
一方で、「価格が高い」と感じる人も多く、合計で84.7%に達している。
また、「安全である」「環境に負荷をかけていない」といった項目でも高い評価を受けているが、 「おいしい」と思う割合は16.9%と比較的低い傾向が見られる。
(農林水産省 令和6年9月「有機農業をめぐる事情」より)

土づくり環境

エアハルト・ヘニッヒの著書「生きている土壌」には、土壌の中の腐植が減ってくると、地下水に肥料分が流亡することで、硝酸態窒素が川や海を富栄養化し、藻や水生植物が過剰に繁茂してバランスが崩れ、漁業などに深刻な影響を及ぼすことが述べられています。

土壌の腐植度合いによる硝酸態窒素(NO3)の検出深度の違い

土壌の腐植度合いによる硝酸態窒素(NO3)の検出深度の違い
腐植の多い土壌と少ない土壌における硝酸態窒素(NO3)の流出比較 腐植の多い土壌では、硝酸態窒素(NO3)が土壌中で保持され、地下水への流出が抑えられる。 一方で、腐植の少ない土壌では、NO3が地下深くまで浸透し、地下水汚染の原因となる可能性がある。
このことから、腐植の多い土を作ることは、作物の成長を助けるだけでなく、水質の悪化を防ぎ、水系環境を保護する役割も果たすことがわかる。

良い土とは

良い土とは、作物が健康に育つ土です。
それは、水持ちと水はけがよく(物理性)、過不足のない養分を保持し(化学性)、病原性の微生物が少なく有用な微生物が多い(生物性)、空気を含んだ根が張りやすい土です。

土壌の健康を支える3つの要素

土壌の良好な状態を維持するためには、以下の3つの要素が重要である。

  1. 物理性がよい
    • 水はけがよく、水持ちがよい
    • 空気を含んでいる
  2. 化学性がよい
    • 養分バランスが整っている
    • 肥料もちがよい
  3. 生物性がよい
    • たくさんの微生物が存在する

これら3つの要素を担保するのが土壌団粒であり、土壌の構造を良好に保つ役割を果たす。

団粒構造の土とは

岩石が風化した鉱物の粒子と生物遺骸が微生物に分解された粘着物質を含む有機物(腐植)が集まってくっつき、
数mm 以下のつぶつぶ状の構造(団粒構造)になっている土。通気性、水はけ、水持ちともによく、団粒のなかに有用微生物が住みつき、植物の生育を良くする要となる。

ミクロ団粒とマクロ団粒
ミクロ団粒
  • 空気・保水
  • 粘土粒子
  • 腐植
  • 土壌微生物

↓ミクロ団粒が集まった状態になる。

マクロ団粒
  • 粗大有機物
  • 糸状菌菌糸

空気・水の通り道ができる。

オーガニックnico の

土づくり

土づくりの技術とは、物理性・化学性・生物性のよい土壌を作るため有機物を入れ、微生物の力で土を団粒化し、作物が健康に育つ条件を整える技術です。

オーガニックnico では、ハウスと露地でそれぞれ下記のような土づくりをしています。

ハウス
  • BLOF 理論に基づく太陽熱養生処理を用いた土づくり
露地
  • 堆肥を用いた土づくり
  • 太陽熱養生処理と緑肥を組み合わせた土づくり

ハウス栽培の土づくり

オーガニックnico のハウスでは、主にミニトマト、イチゴ、ベビーリーフ(アブラナ科、アカザ科、キク科)を栽培していますが、基本的に連作になります。
真夏の暑すぎて作物が生育しにくい時期に太陽熱養生処理を行うことで、連作障害を抑制して土づくりをしています。

腐植源=炭素源(堆肥)、窒素源(有機肥料、米ぬか、油粕など)、ミネラル源(カキ殻石灰、苦土石灰ほかミネラル肥料)、微量要素(微量要素肥料)を投入資材として太陽熱養生処理を行います。
さらに、土壌分析を行い、土壌の状態に応じて太陽熱養生処理時に投入する資材の施肥設計を行います。
これら投入資材の考え方や太陽熱養生処理の方法はBLOF 理論※に基づいています。

BLOF理論

小祝政明先生が提唱する「Bio Logical Farming: 生態系調和型農業理論」の略

  1. 植物生理に基づいたアミノ酸の供給
  2. 土壌分析・施肥設計に基づいたミネラルの供給
  3. 太陽熱養生処理による土壌団粒の形成

などを骨子としている

BLOF 理論に基づく太陽熱養生処理とは

太陽熱養生処理は、圃場に適した資材(堆肥・肥料・緑肥)を投入し土壌水分を調整した上で、透明ビニールで土壌表面を被覆し、太陽熱を効果的に利用して土づくりをする方法です。
特に、繊維質の多い中熟堆肥を用いたBLOF 型太陽熱養生処理は、土壌分析の数値に基づいた施肥設計を行い、物理性・化学性・生物性の改善効果が最も高いものです。

効果
  1. 微生物が活性化し、炭酸ガスの発生により土壌間隙が多い団粒構造が形成され、作物の根張りが改善する
  2. 有用微生物(バチルス菌・放線菌)が増えることにより、病原菌(主に糸状菌)が抑制される
  3. 堆肥由来の水溶性炭水化物が供給され、窒素だけではない地力の向上が見込まれる

上記に加えオーガニックnico では、一定以上の量の炭素を投入し、投入資材のCN 比を一定の数値内に納める土壌養生を行うことで、微生物活動が活発になり団粒構造が確実に形成される土を作ります。投入する資材の総炭素量を把握することで、土壌の腐植量=炭素量が年々増加していくような土づくりをしています。

堆肥や肥料を散布する

すき込んでから十分に灌水する

透明フィルムで隙間なく覆う

露地栽培の土づくり

露地ではオクラ、トウガラシ、ナス、ニンジン、ブロッコリー、カブ、ダイコンなどを栽培しており、複数箇所の圃場で緑肥を組み込んだ輪作を行っています。
太陽熱養生処理は必ずしも行いませんが、作付ける作物の種類や前作の成績によって、高水準の土づくりが必要な場合には緑肥または堆肥を炭素源とする太陽熱養生処理を行います。
緑肥は夏はソルゴー、セスバニア、クロタラリア、秋から春にかけてはエンバクを主に使用しています。
ハウスと同様に土壌分析の結果を元に、腐植源=炭素源、窒素源、ミネラル源、微量要素に分けての施肥設計を行い、緑肥を含む投入資材の炭素量、CN 比の最適化を行います。

緑肥とは

緑肥とは、植物を栽培し土に戻すことで土壌改善を行う、土づくりのための作物のことです。

効果
  1. 有機物補給による土壌の団粒化や根の伸長により耕盤層を破壊して透水性を改善し、より良い土をつくる
  2. 根粒による窒素固定や地下溶脱養分の吸い上げで作土層へ養分を補給し、有機物により有用生物が活性化され地力が高まり、減肥にもつながる
  3. 有害生物の制御や土壌侵食の防止
緑肥による土づくりと効果
イネ科緑肥とマメ科緑肥の効果
イネ科緑肥の特長
  • 光合成による炭素の固定
  • 深いところの養分を吸い上げる
  • 根が耕盤層を貫通することで通気性を改善
マメ科緑肥の特長
  • 光合成による炭素の固定
  • 根粒菌が空中窒素を固定
  • 有機物の生産と養分の蓄積
  • 線虫や土壌病害など有害生物の抑制
鋤き込み後の効果

緑肥を破砕・鋤き込むことで以下の効果が得られる:

  • 有機物の補給
  • 有用な微生物の活性化
  • 根穴による水はけの改善
  • 耕盤層の軟化
  • 有機態・無機態養分の供給
  • 難溶性養分のキレート化による利用促進
最終的な効果
  1. 効果1:良い土をつくる
  2. 効果2:肥料効果があり減肥に役立つ
  3. 効果3:有害生物の抑制

ハンマーナイフモアによる緑肥(ソルゴー)の刈り取り粉砕